大正元年(1912年)9月13日、明治天皇の大喪の礼が行われた日に乃木希典は妻と共
に自刃しました。乃木希典といえば、日露戦争にて有名な203高地を陥落した陸軍の
英雄です。晩年は明治天皇の命を受け、学習院院長に就任しました。軍人だけでなく、
教育者でもありました。
そんな彼が自刃した理由ですが、遺書には、西南戦争で軍旗を薩摩軍に奪われた責任
を取るためだと記述されていたそうです。西南戦争は40年前の出来事ですので、本当
にそれが自刃の理由なのかどうかは分かりません。ただ、遺書に書いているというこ
とから、軍旗を敵に奪われたという自責の念をずっと持ち続けて生きてきたのだろう
と推測することはできます。
自責という言葉が出てきましたが、自責と対峙する言葉としては他責という言葉があ
ります。
自責とは、自分が抱えている問題の原因は自分の中にあり、自分次第で対処、コント
ロールできるのだから、まずは自分がどのように行動するべきかを考えようという思
考法です。
一方、他責は自分が抱えている問題の原因は自分以外の周囲の人々や環境にあるため、
周囲の人々の行動や考え方を何とかして変えなければならない、と考える思考法です。
自分が改めるよりも他人が改まるべきと考えることです。
一見すると、自責で考える人は常に自分を否定して考えるマイナス思考の人間だと捉え
られます。しかし、本当にマイナス思考の人間であれば、まずは自分が主体的に行動を
変えて対処していこうという姿勢にはならないのではないかと思えます。むしろ、何か
都合が悪いことがあるとすべてを他人の所為にしたり、環境の所為にして、自分はその
まま、相手や環境が悪いと考える人間の方がマイナス思考なのではないかと思います。
自責で考えるから自己肯定感が低い、のではなく、自責で考えた結果、まだ自分にはや
れることがあるはず、と考えることができるのだと思います。自分の可能性を信じるこ
とができているのですがから十分自己肯定感は高いと言えます。片や、他責思考は、自
分はやるべきことはやっている、分かってくれないのは相手に問題があるからだ、と言
って自分の思考の限界をすぐに作ってしまっているのであれば、それは自己肯定感が高
いとは言えません。
その意味では、人材育成においては、安易に自責思考、自己反省をマイナス思考と捉え
るのではなく、そこから新たな挑戦に向けた行動革新につなげるような指導、育成のあ
り方が重要となるのだと思います。
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