管理者の意識革新

●意識を変えるとは

 

  「意識革新」、「意識改革」、「意識を変える」という場合に使われる「意識」とは、モノの見方、考え方を意味しています。経営者が「うちの管理者は意識革新が必要だ。」と言うのは、「うちの管理者のモノの見方を変える必要がある。」と言っていることになります。モノの見方は、人ぞれぞれです。多くの場合は、その人の経験により確立されます。経験を通して、こうあるべきだ、これが正しいやり方だ、というものを実感し、自分のものにします。それが客観的に見ても好ましい考え方であれば良いですが、偏ったものであるとその行動にも偏りが出てきます。

 管理者の意識革新を促すということは、行動面での偏りがその人のどのような考え方、価値観、基準に基づいているものなのか、どうしてそのような考え方をするに至ったのかを本人に気づかせ、別の見方をするとどのような行動を取ることができるのか、それによりどのような結果が得られるのかをイメージさせることです。(できれば、新たな行動によってどのような結果が得られたのかの振り返りまでできると良い。)

  

●対象とするべき管理者

 

  管理者にもいろいろなタイプがいますが、その役職に対する積極性という観点からいえば、大きく3つに分けることができるのだろうと思います。

 

 ①管理者としての使命を果たそうとしている人

 ②任命されたので仕方なく(いやいや)管理者となっている人

 ③特に何も意識していない人

 

 ①から③の中で一番好ましいい管理者は、①となるかと思います。②、③は管理者としてこうありたい、という想いが無い人ですので受け身的な姿勢の管理者だと言えます。中には、任命された当初は②でも気持ちを入れ替えて①となる方もいるかと思いますが、いつまでも②の状態でいるとしたら、早めに管理者から外してあげた方が組織とそのメンバーのためにも良いかと思います。③についても同様です。

 組織というのは、それを率いる人によって変わるといわれています。トップのマネジメント方針が変われば、求められる動き方も変わります。動き方が変われば、組織全体の風土も変わります。したがって、管理者になったからには、その組織をどのような組織にしたいのか、何を目指したいのか、というものは持っておく必要があります。組織を率いる人がその組織をどこに持っていくかが分からない、ではそれについていく人たちも困ってしまいます。

 このように考えますと、「管理者の意識革新が必要だ。」と言う経営者の方が対象としているのは、①の管理者ということになります。対象を広げたとしても②、③の一部の管理者です。②、③の一部というのは、②、③の管理者の中から①の管理者になろうとする人たちです。①の管理者になるのをいつまでも待つこともできませんので、そこは期限を切って見極める必要があります。

 

●意識革新の方向性

 

 管理者に求められる役割は、中長期、短期の組織目標を達成させるためにありとあらゆることに取り組むことです。別の言い方をすると、目標達成のために柔軟にものごとや、周囲に対応することです。ところが、この柔軟に対応する、ということができそうでなかなかできません。そのことに自ら気づき、自分の言動に修正をかけられる人であれば良いですが、多くの場合は、自分のスタイルを変えようとはしません。または、変えることができません。

 自分のスタイルとは、自分が正しいと思っている自分のやり方という意味です。自分は正しいと思ってそのように発言し、行動しているのに、上手くいかないと、その原因は自分以外の周囲に向けられます。その状態が続くと、周囲や相手を変えることに労力を費やし、挙句の果てには、「あいつはああいう奴だからだめだ」と諦めてしまいます。

 逆に、管理者として本来はこのように対応しなければいけないとは分かっているのだが、それをおこなうことができないままズルズルと過ごしてしまっている、というケースもあります。自分がやるべきこと、発言すべきことは分かっているのですが、それを言っても効果がないだろう、言ったらメンバーとの関係性が悪くなるだろうと考えて自分を抑制してしまう場合です。以下に、偏ったモノの見方の例を挙げています。

 

 ア)一方的な指示、命令が多い(自分は言うべきことは言っている)

 イ)皆が気持ちよく働ける職場を作ろうとする(組織の雰囲気を重視する)

 ウ)何でも自分一人でやろうとする(人に任せられない)

 エ)管理者としての体裁を気にする(弱みを見せないようにする)

 オ)個々の自主性を重んじる(相談があれば応じる)

 

  これらは、発揮する場面次第では正しい行動となりますが、そうでないと偏ったマネジメントスタイルに映ります。つまり柔軟な対応が取れていないということです。この柔軟な対応を取るためには、モノの見方も一点からではなく、様々な角度から捉えられるようになることが求められます。

 自分の思考方法に拘る理由、本当にそのような見方、考え方しかないのか、他にもっと違う見方はできないか、できたらどういう行動が取れるようになるのか、その行動がどのような成果を導くのかといったことを自問自答してもらうプロセスが重要となります。また、そのような思考を促すような質問を投げかけ続けることも必要となります。質問内容によっては、すぐに答えられないようなものもあるかと思いますが、それでも時間をかけて自分に問いかけ、考えてみることが新たな気づきをもたらします。

 意識を変える、という取り組みにはそのような時間と空間を用意することが求められます。

自己内観研修は、そのような環境をつくり、意識を変えるためのプロセスを用意しています。)